コラム

現代介護の基礎知識

介護保険について

⓾「生活援助従事者研修」

 介護保険制度は、要介護認定を受けたら、介護サービスを受ける権利が生じます。安心してこの町で暮らし続けたいと願う高齢世代が増え続けています。在宅介護で一番必要とされているのはホームヘルパーです。ホームヘルパーは人手不足で有効求人倍率は14.1倍だそうですが、なり手がいません。マスコミや制度に物言う人たちは、簡単にヘルパー不足と言いますが、介護保険制度では、訪問介護のホームヘルパーには資格が必要なのです。  
 
 資格取得には130時間の講座と7万円前後の費用がかかります。希望したら誰でもすぐに働ける仕事ではありません。公的職業資格取得と言われても低賃金で身分保障にないヘルパーに今からなりたいとは思えないのです。生活援助従事者研修は、2018年4月に新設された資格です。新設された目的は労働力の確保です。訪問介護事業所では、生活援助と身体介護の両方を行うことが出来る介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)の資格が必要となります。しかし、有資格者の人材確保が難しくなっているので、生活援助サービスと身体介護サービスを切り分けて、生活援助を専門に行う人材を確保するために創設されたのです。 
 
 生活援助従事者研修の学習時間は約59時間で介護職員初任者研修の130時間と比べると約半分となっています。カリキュラムのうち29時間は通信学習で学ぶことができます。40~50代の子育て中の主婦が狙いのようです。受講料は自治体によって異なりますが民間では18000円とか。研修と言っても掃除、洗濯、調理、買い物代行等の生活援助サービスは主婦ならだれでも出来るだろうという考えのようです。
 
 ホームヘルパーは介護認定を受けている人の生活援助で、同居家族の出来ることやペットの世話などは出来ません。家政婦ではないことを教えられるのでしょうか?女性がハローワークへ行くと勧められるそうですが、ホームヘルパーに対する社会的評価と報酬を国が高めなければ人手不足は変わりそうにありません。生活援助従事者研修で本当の人作りになるのでしょうか?
(松村勝人=当会世話人・ケアマネージャー・元介護事業所経営)
 

⑨「介護保険料」

令和6年度の介護保険料納入通知書が市から届いた。2か月に1度の年金からの引き落としだ。介護保険に頼らずに厚労省が勧める「健康、長寿、ピンピンコロリ」で少ない年金で暮らしている私にとっては「高いなあ」と思った。
介護保険料は、半分が保険料、半分が公費(税金)。国が25%(調製交付金5%を含む)、都道府県が12.5%、市町村が12.5%。
40歳から64歳までの現役世代、第2号被保険者(27%)は給与から引かれるのであまり自覚がない。社会的に問題となるのは65歳からの第1号被保険者(23%)の保険料だ。高齢化社会で人口の3割が高齢者になる。
持続可能な介護保険制度を第一とする厚労省は、「給付と負担」のバランスとして保険料の引き上げを考えている。
第1号被保険者保険料は、3年に1度自治体の介護保険事業計画によって、介護保険料基準額が決められる。算出にはいくつもの条件がある。介護保険の法律規則はコロコロと細かく変わり「介護給付の適正化」として①応能負担の強化(高所得者の負担増)、②介護サービス利用時の負担割合(1割~2割)、③被保険者範囲の見直し(40歳より若い世代~)等が示されている。
介護サービス(給付)の増加に伴い保険料も引き上げられるのだ。
低所得者等への対応は、各自治体が所得段階を13段階~20段階位に分けて負担額を決めている。平均月額は6000円位だ。
各自治体が、どんな福祉政策で介護施設を増やすのか、在宅介護を充実させるのか、介護予防優先の事業をするのか、それこそ「アクション“介護と地域”」の地方議員のみなさんの頑張りどころでしょう。
介護保険は国民の義務。40歳から一生払い続ける人と、介護保険サービスを1割負担で受けられている人との感じ方の違いかもしれないが、やっぱり介護保険料の負担は大きい。厚労省より財務省に社会保障費を増やすように要望するべきなのかなあ。
 (松村勝人=当会世話人・ケアマネージャー・元介護事業所経営)
 

⑧「75歳ホームヘルパー(訪問介護員)のつぶやき」

一般的に旧ホームヘルパー2級の資格保持者を指すことが多い。介護保険制度ができ、訪問介護員として働ける国家資格(?)を持つホームヘルパーが大量に必要になった。資格取得には130時間の座学と体験が必要で1か月半余りかかった。行政は子育て終わった団塊世代を対象に無料で講座を開いた。当時はホームヘルパーの資格に社会的評価があり、7万円前後支払って民間の講習に行く人も多かった。子どもたちは「お母さんヘルパーしてるんだよ」とうれしそうに自慢げに話していた。
そして25年。同級生ヘルパーの友人はこうつぶやく。
「地域福祉の登録ヘルパーとして、今でも身体介護の訪問介護を続けている。担当したお年寄りが亡くなるまでとの思いが一人ひとり続いてしまうからだ。私は利用者よりも年上のヘルパーになってしまった。自転車で一軒一軒回るのはつらくなった。でも待っている人がいる。訪問介護員が減り、高齢化したと簡単に言うが、時給が上がっても訪問介護ヘルパーは増えないと思う。介護保険制度の矛盾を見直してほしい。私を介護してくれるヘルパーさんは、もういないだろう」
(松村勝人=当会世話人・ケアマネージャー・元介護事業所経営)                                                                                      

⑦「共生社会認知症基本法」

 「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は、認知症に関する初の法律として成立。この法律の目的は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるように共生社会を実現するため、国や地方が認知症に関する総合的な施策を計画的に推進するものです。
基本的施策が書かれていますが、自治体が具体的にどんな施策を行っているのかは様々です。認知症の人の要介護認定、医療と福祉サービス、チームオレンジ、見守り支援・ホームヘルパーの対応、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、認知症サポーター、キャラバン・メイト等。痴呆性老人から認知症に呼び方が変わって20年。認知症中核症状のある人が、安心して暮らせる共生社会になるかどうか、人生100年時代、高齢者の未来はまだ見えません。                       
  (松村勝人=当会世話人・ケアマネージャー・元介護事業所経営)
                                                                                      

⑥「看護小規模多機能型居宅介護」

自治体の「第9期介護保険事業計画」に「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」の開設が多く書かれるようになりました。「通所介護(デイサービス)」「訪問介護」「短期入所(ショートステイ)」の3つの介護サービスに「訪問看護」の機能を加え、看護と介護を一体的サービスとして受けられる複合型サービスです。看多機では、サービス拠点での「通い」「泊り」においても看護サービスが一体的に受けられ、医療ニーズの高い人の療養生活も支えられます。
すべてを一つの事業所が提供することになりますので、今までのケアマネもヘルパーも変わります。利用者が安心できるかどうかは何とも言えません。厚労省は医療・介護の連携、サービス内容の明確化など普及を進めています。
施設では利用登録者や宿泊定員(9人)が限られていますので、地域の中重度の要介護者や家族から不満が出るのではないかと思います。
 (松村勝人)
                                                                                           
 

⑤「特定施設入居者生活介護」

特定施設入居者生活介護は、厚生労働省が定めた基準を満たした有料老人ホームやケアハウスなどの施設で受けられる介護サービスのことです。
特定施設の指定を受けた施設は「介護付き有料老人ホーム」と呼ばれ、24時間介護サービスや生活支援、技能訓練などのサービスを提供しています。
入居している要介護者を対象とした介護は介護保険の対象となります。
入居時の費用は入居一時金と月々の費用がかかります。その他不定期で追加サービス費がかかります。
入居費が高額な場合が多いのに利用者が多いのは所得の高い、保有資産の多い高齢者が一定程度いるからなのでしょうか?入居者は要介護3以上、認知症の人などが終の棲家として看取りまで対応する有料老人ホームに入所する人が多いようです。「介護離職ゼロ」の受け皿とか?
ただ、一人当たりの介護保険給付月額は、施設サービスの介護老人福祉施設(特養)と居住系サービスの特定施設入居者生活介護の費用が給付額の1/3を占める自治体もあります。訪問介護はホームヘルパーが足りないから?
介護が必要な被保険者に対して安心してこの町で暮らせる公平な介護保険制度になっているでしょうか。
(松村勝人=当会世話人・ケアマネージャー・元介護事業所経営)
 

④「健康・長生き・ピンピンコロリ」

介護保険事業計画が目指しているのは、健康・長寿・介護は短くのようだ。
「健康長寿のまち」は国や自治体が掲げる言葉だが、市民も入院や要介護状態にならずに元気に暮らして「コロリ」と人生の最後を迎えたいと思っている。人生100年時代を迎えて、平均寿命と健康寿命の差が男女とも10年前後あり、要介護認定も80歳を超えると多くなり、生活を支える介護や医療・リハビリの必要性、認知症対応等、介護保険事業の必要性がピークになる現状になっている。一人暮らしでも、認知症になっても、中・重度の要介護状態になっても、住み慣れた地域で生活を継続できるまちになるには、厚労省から「介護予防・日常生活支援総合事業」として自治体は、介護予防に力を入れざるを得ない。介護をする人が足りないのです。「まちぐるみ支え合い」「地域共生」「地域包括ケアシステム」は、保険制度ではなく税金でやるべき社会保障・福祉ではないかと思う今日この頃です。
(松村勝人=当会の世話人・ケアマネージャー・元介護事業所経営)
 

③介護保険料

介護保険料は、介護保険制度において、40歳以上の住民が市区町村に対して支払うお金です。被保険者は、この保険料を負担する義務を果たすことで、給付(介護サービス)を受ける権利を得ます。
市区町村は、保険料を集め、被保険者に介護が必要になった場合には、このお金で介護サービスを提供します。
保険料を負担することで、必要なときに公平に給付を受けることができるのです。介護サービスを利用する際には、保険料とは別にサービス費がかかります。40歳~64歳は第2号被保険者、65歳以上は第1号被保険者に区分され、保険料の徴収方法や金額の決め方、給付の要件が異なります。介護保険料は、自治体の介護保険計画によって3年に1度変更されます。保険料は所得によって変わりますが、第1号被保険者は月額6000円~7000円(武蔵野市の基準額は6600円)です。
あなたの年金から引かれている介護保険料を確認してみてください。保険料の支払いは、給付を受けなくても終身にわたり続きます。(松村勝人)
 

 ②「地域包括ケアシステム」

厚生労働省が策定した「地域包括ケアシステムの構築」には●団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現。●今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要。●地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要。とあります。「介護の社会化」と言われた介護保険制度から随分と離れた気がします。自助・互助・共助・公助とありますが、介護保険料を負担することで、介護サービスを受ける権利が得られたはずです。ボランティアや地域住民による互助って何なんでしょう。 〈松村勝人〉
 

①「第9期介護保険事業計画」

介護保険事業計画は、国が介護保険事業に関わる保険給付を円滑の行うために市区町村が策定する計画です。3年を1期として改定が行われ、第9期は2024年度から2026年度です。各自治体は具体的な取り組み介護給付・総合事業、介護保険料を策定します。武蔵野市では策定の専門部会に1号被保険者、2号被保険者の公募委員が選ばれています。市民に知らせるためにも大変良いことだと思います。
厚生労働省から、基本指針として①介護サ-ビス基盤整備 ②地域包括ケアシステムの深化・推進 ③介護人材の確保と介護現場の生産性の向上 が示されていますのでこれらの課題に対応できる自治体、地域包括ケア、市民でありたいと思います。
松村勝人 (東京都・武蔵野市在住)